カールルイスがパンクした



「さー帰るかー・・・わひょっ!!」
驚愕の表情を浮かべたリーマンが夜の池袋に確かに存在した。俺のチャリンコ、カールルイス号が自らの力で体を支えきれなくなり、モロに転倒していたのだ。「大丈夫かカールルイス、さあ帰るぞボケカスが」と持ち上げた瞬間、確かにカールルイスはなにかのメッセージを俺に残そうとした。「ボス、足が・・・」チャリンコのくせに生意気抜かすんじゃねぇと起こして漕ぎ始めた瞬間、カールルイスは悲鳴を上げた。
「お前・・・もしかしてパンクか?」
当然カールルイスはガコンガコン言うだけでそれ以上のメッセージを俺に発しない。チャリンコ置き場のおっさんに空気入れを借りて、ドーピング。カールルイスがベンジョンソンになった瞬間だ。
だがしかし、池袋の町並みを抜けていく途中で、ドーピングが切れ、またもやカールルイスはガコンガコン悲鳴を上げ始めた。街行く人々の視線が集まる。
「ママァァァァァァッッッッ!!パンクしてるアジアがいるよォォォォォッッ!!」
「しぃぃぃッッッッ!!見ちゃダメよォォォォォォッッ!!」
「おい見ろよ、今時パンクしてる奴がいるよ。パンクて!」
「あはははぁっ!流行らねぇんだよォォォォッッ!!」
今まで他の人が「チャリンコに乗った残業疲れのリーマン、つまり勇者」という肩書きで俺を見てくれていたのに、あっという間に「パンクしたアジア」に早変わりか。ナメんな。
チャリンコという機能は漕いで前にすすむんだから果たしているのに、ただ空気が無いだけで乗っている人のステータスを下げる。それがチャリンコ。土曜日、名医ブラックジャック先生(チャリ屋のおっさん)に直してもらおうな、カールルイス。