新人大漁!



俺様の引退前にたくさんのガキどもが履歴書という名の拘束許可証をうちの店に提出した。その数実に4人という非常に働き手に困っていたマグロ漁船の航海士よろしく俺たちベテランはこの事実に湧きかえっていた。と同時に危惧していた。


いかんせん全体的に若すぎるからだ。部活やりまくっててほとんどバイトをしたことがない奴や、中学の時から一人の女とず〜っと付き合ってる奴とか、高校生を前面にアピールする奴ばっかり。人が居ないのはもう口に出さなくても分かるうちの店の既成事実ではあるが、とりあえず一人くらい即戦力+お金大好き人間が来て欲しかった。まぁでもこれで未来の心配は少しは軽減された感がある。


基本的に高校生は将来性である。かの俺様だってこの店に入所した際にはピチピチの高校生だった。配達なんぞやったこと無かったのに3ヶ月経ったらエリア内を地図を見ずに走っていた。ベテラン勢は大抵高校生からの叩き上げという現状を鑑みればまぁ店長の判断は正しかったと言える。


だがしかし、このガキどもに俺らの代わりが勤まるのか?店がどんな天変地異でも揺るがず営業できたのは俺らの獅子奮迅の活躍のおかげと言っても過言じゃない。配達するのは店長じゃない、俺たちだ。人が壊滅的にいない状況でも、豪雨の日でも、誰かが神のいたずらによって事故を起こした時でも、体調管理が下手糞な奴が高熱を出した時でも、うちの店では珍しく誰かがサボったときでも、現場で俺たちは配達することをやめなかった。


ここまで来たのは店長の手腕でも、土地柄でもない。俺たちが有能かつ強靭な精神力を誇り、さらに責任感の強い勇者だらけだったからである。そのどちらかが欠けていてもいけない。欠けたらこの店で長きに渡り配達を行なうことはまず不可能に近い。


しかし、時は無常にも勇者達にも引退の鐘を鳴らしたわけである。次なる後継者を育てなくてはいけない時に周りを見渡しても誰も居なかったら、うちの店の未来はないわけだ。
その点では本当に今のうちしか補充できるタイミングは無かったかもしれない。


こいつらに俺らの培ってきたノウハウをすべてぶち込んでから俺らは社会に出る。それが俺らに残された最後の店からの課題であるし、店長の最大の願いである筈だ。
願わくば、勇者となってくれることを。その結果は来年にならなければ分からない。