大晦日



一年の終わりはまさに地獄と言っても過言ではない。これまで、数多くの地獄を経験してきた俺ではあったが、これほどまでの地獄もそうあるまい。地獄の中でも、精神的、体力的にもトップクラスの被害度である。むしろ今まで地獄を大安売りセールで宣伝しすぎた感さえある。だが、本日は正真正銘、真と書いてまことの地獄である。


まず、朝起きて大航海時代ジェノヴァ−マディラの金銀貿易を行い、世界が買えるほどのマニーを手にした。そろそろバイト行くかーと思って窓を開けた瞬間、驚愕の風景が目の前に飛び込んできた。真っ白。雪だーーー!!
一昨日も雪は降ったが、積もりはしなかった。だから普通どおり営業していたのだけれども、なんとまぁ本日は完璧に積もってる。積雪。ありえねぇー!で、長靴を履いてバイト先にレッツゴウ。
まず、おびただしいキャンセル伝票があり、店内に残ったデリバリーたちがさんざんにわめいている。
「あー坂田!無理だよ無理!」
「なんだぃ、これ(キャンセル伝票)どしたの?予想はつくけど」
「決まってんだろ!配達できねぇよ!配・達・中・止・だ・よ!」
「ええ〜!やっぱりかよ!」
そう。もう雪が積もってバイクは進まないので注文をすべて打ち止めにせざるを得なかったのです。原付に積雪は大敵。もうどうにもならんわけです。そして仕事入って状況確認。やべー。10枚くらいキャンセルされてる・・・時間かかりすぎたのか・・・
で、店長帰ってきて俺ら15時番の方針決定。
「注文は取れ」
「マジすか。配達できます?」
「俺が車で配達する。時間は何時間かかるか分かりませんってアナウンスしろ」
来ましたよ。車配達。もう3輪は全滅宣言です。坂が登れなくてバイクを置いて1時間くらい歩いて帰ってきた奴。途中ですっころんでピザをダメにした奴。歩いて配達に行く奴などさまざまなケースでもうバイクは無理だ!と叫びまくるデリバリーが朝のうちに量産されたので、ついに車を出すに至ったようです。
しかしこれまた何故か電話鳴りっぱなし。皆雪降ってるから出前頼むのか。外の景色を見ればもはや積雪は敢然たる事実。素人目にも配達が不可能であることくらい分かる積雪量と相成った。
「何時に配達できるか保障は無いんですけど・・・」
「なんでよ!速く持ってきてよ!」
「今車一台のみで配達を行なっておりまして・・・それは無理です」
「ああ〜もう分かったわ!できるだけ速く持ってきて!」
下手に注文取るともうずっとこんな感じ。俺たちが悪いわけじゃない。積雪が悪いんだ。罵声を浴びせまくってくる客たち。胃がイテェ。そんだけ怒るくらいだったらソバでも食ってろよコンチクショウ。
で、17時くらいになって予約の注文の配達に行き始めたけど、当然予約の時間に車一台のみの配達で間に合うわけが無い。電話しなきゃいけない。しかも何故か俺がその電話役。
「申し訳ございません、18時に予約されていたピザが・・・積雪の影響で・・・何時に配達できるか分かりません・・・」
「あのさー、うちが頼んだのお昼だよ!何で持ってきてくれないの!?」
「ですから、積雪で車で配達していて・・・」
「わかった、もういいわ!さっさと持ってきて!」
×15。俺は予約の件数の数だけ罵声を投げつけられ、店には配達に行くことの出来ないデリバリーと、ひっきりなしに鳴る「ピザもってこい」という横柄な要求。おかしくなるよ。なんだこれは〜!
さすがに店長も諦めたらしく、18時に注文受付はテイクアウトのみ受付、配達は完全停止という措置を取った。それでも、客からの電話は途絶えることは無い。
「ピザお願いします」
「申し訳ございません、本日配達は行なっておりません」
「何とかならないの!?」
「申し訳ございません」
「もういいわ!」
マジでずっとこんな感じで俺は3時間近く予約と電話の客に怒られっぱなし。限界!限界です!ブチギレそうです!無理です!
・・・ということで時は過ぎ、21時。
オープンの人間達が配達が無いのであがる。これからテイクアウトのみかーもう電話ヤダーとか憂鬱になってたら・・・店長が・・・
「じゃあ注文開始で。時間は何時間かかるかわかんないってまたアナウンスして」
は!?アンタ今デリバリー帰したよな?2本しかいねーぞ。どうやって配達?
「坂田は走って。俺はまた車で行くから」


キター


積雪デリ。死ぬだろ!無理だよ・・・!
しかし・・・もうこうなったら店内に居てもしょうがない!ただ罵声を浴びせられるだけだし、諦めもついた!雪で滑って死んでも、それが運命ならしゃーねー!デリバリーだ!行くぞ!
というわけで積雪デリ。高校生達が22時で帰って、相変わらずひっきりなしに止まらない電話。もーこーなったらどこでも来い!以下タイムテーブルで。


22時半 → 出発。テイクアウトの客が雪だるまを店の外に暇つぶしに作っていたのを手刀で一刀両断。バイクが進まないが、何とかスライドするバイクを巧に操り、配達終了。
23時 → お釣り出すのが遅かったおばあちゃんの家の前の雪だるまをローリングソバットとストンピングで完全破壊。30キロで雪のかたまりを踏んで死にかける。
23時半 → ラストのメイクが悲鳴。電話の受話器を上げて電話がかかってこないようにするプレゼントを贈る。雪だるまをバイクで突っ込んで破壊。
24時 → 最後の注文で変な会社の寮。バイク止める時に20メートルくらいドリフト。寮に突っ込むかと思った。その瞬間2005年。なんも嬉しくねぇ。寮の前の雪だるまを落ちてたほうきで、面→篭手面→下がり面→すりあげ面→逆胴→胴でボコボコに破壊。
25時半 → 店の掃除終了
26時 → 集計終了。お疲れさん。


俺も数ある営業を乗り越えてきたけど、今日ほどメンタルを攻撃される営業も無かった。そう、地獄。まさに地獄。2004年は地獄で終わった。総合で見たらいい年だったが、20%くらい良さが減った気がする。でも年も変わったんだから、頑張るぞ!何はともあれ、こんなクサレ日記ですが今年もよろしくお願いします。