嘆くなり同期の花が咲いた人間達



もうすぐで俺様もピザ屋終了ということで、たまに辞めた後のことを一緒に辞めていくベテランなどと喋っているのだが、同期のベテランの中に昼間は普通に働いている4つ上のおじさんがいる。そのおじさん曰く、「土日しか入ってない俺は新人のめまぐるしい入退店についていけません。このままだとクリスマスはヤバいし来年からはどうなるんだろう…」と嘆いていた。
大量に入った新人達はその3分の2が消えた。もう残っている新人は2人しか居ない。でもクリスマス終了後一月も経てば俺は消えるし、デリはもう2人消える。メイクも2人消える。正直、今の時点でシフトは一杯一杯の状態なのに、さらに4人も消えるのである。さらに店長まで消えるのだ。そこで同期のおじさんがピザ屋の行く末を嘆くに至る。
我々は一緒に働きすぎた。色んな苦難やら障害やら天候不順やら乗り越えすぎた。もはや完全な仲間という一線を越えつつある。働いてない時でもよく遊ぶし、俺に至っては携帯電話の着信履歴は100%ピザ屋絡みで構成されている。そんな仲のいい俺達も、来年で散り散りになるわけだ。
残る人間達のことを心配しない日は無い。俺はもうすぐ辞めるからどうでもいいや〜とか考えるような無責任な人間では無いし、口でそう言っても心の中は皆の行く末を案じる事だけだ。何しろ仲間だ。でも時は無常なもので刻一刻と「その時」へと近づいていく。気がつけば仲間と働く時間は後2ヶ月しかない。寂しいもんである。仕事中に大声で下ネタを言い合ったり、映画の感想戦をしたり、電話にカチ切れたりすることは恐らく会社などでは出来ない。大切な時間であった。少なくとも今現在の俺の人格を形成するに至る大きな人生の3年間だった。
でもピザ屋に俺たちがいると、ベテランが仲が良すぎるので新人は居場所が無くて続かないだろうし、異常な権限を持った人間達が大量に存在する店は店としては好ましくない。隣のエリアの店長は言ったもんだ。
「この店はバイト達の仲が良すぎるよ。こんだけ仲良いとカラーが決まっちゃっていい店にならない。俺は・・・」
そこで当時20歳の俺は一言。
「いや、十分ですよ。今十分にいい店です。たとえ仕事が半人前でも、仕事中うるさくても、クレームいっぱい来ても、店長働かなくても、俺は好きですよ、この店。選んで正解でした」
あと2ヶ月。たった2ヶ月かぁ。